第27章 尻軽女

黒谷優は拳をぎゅっと握りしめ、関節がぎしりと鳴った。

殴りたい。目障りなよそ者を叩き伏せて、南坂海乃を奪い返し、自分の傍に縛りつけたい。

けれど――南坂海乃の、氷みたいに冷え切った眼と真正面からぶつかった瞬間、全身の力がすうっと抜けていった。

撮られている。

しかも、ゴミでも見るみたいな目で、自分を見ている。

こんな場面で手を上げれば、彼女はもっと自分を嫌うだろう。下手をすれば、一生、振り向いてもらえなくなる。

「……わかった。帰る」

「通報でも、晒しでも……気が済むなら、なんでもいい」

黒谷優は俯き、踵を返すと、ふらつく足取りで外へ向かった。

佐藤詩乃は慌てて、ぽかんとし...

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